「ジェイスン」
「んですかもうアンタはいつもいつもいつもいつも僕の名前間違えやがって!!! ホントは判ってるんでしょ僕のホントの名前!!!」
昼下がりの午後、理科Ⅱ教室を廊下を挟んで向かい側にある物置き状態と化した場所にて、いつものように僕--ジェイソンとキンニクの舌戦が繰り広げられていた。
「まぁまぁ、そうカリカリするなって。今日はお前にとってイイハナシを持ち込んでやってんだからさぁ」
「?」
……イイハナシ?
「いつもアンタが持ち込んでくるハナシって、大抵イイハナシじゃないですよね」
「まぁまぁちょっとくらいハナシを聞いてくれてもいいじゃね〜か」
しばらく考えた後、僕は彼の言葉に耳を傾けることにした。
「……で? 何ですかそのイイハナシってのは」
「これだ」
キンニクはぽいっと何か紅いものを僕に向かって投げた。
「……ってコレ、アンタのキンニクじゃないですか!!」
「そーだ。お前、キンニクなくて困ってたろ」
「え、確かにそうですけど……で、でもいいんですか!? アンタの大事なキンニク……」
「いーよ。いつもお世話になってるし」
「要りません」
「なっ、何でだよ!?」
キンニクは僕の思いがけない拒否に動揺した。
「だってアンタがそんなこと言うなんてらしくないじゃないですか。何か今日のお前、気持ち悪い」
「そっ、そ〜んなことないじゃないかジェームズ君。いつもオレはこんなキャラだったけど?」
「絶対違いますよ!! 何かウラあるんでしょう!?」
「そんなこと言うなよ!! ほら、大丈夫だって」
「どこが!?」
キンニクは必死に抵抗する僕(の右腕)をムリヤリ掴んだ。
かぽっ
「あっ!!」
「よし、これで交渉成立。じゃ〜な〜♪」
と言うと、キンニクは軽い足取りでどこかへ去っていた。
「…………?」
本当に、ただの厚意だったのだろうか……?
「あら、ジェイソン」
「あ、内臓サン。こんにちわ」
「きゃああああっ!!!」
内臓サンは僕を見て蒼白になり、急に叫びだした。
「……何ですか??」
「ジェ、ジェイソン……私の肺を盗んだのはあなただったのね!!」
「え!? は、肺??」
「その腕のところに挟まってる紅いもの、それが動かぬ証拠よ!!」
「え、こ、これ……まさか、キンニクじゃなくて……肺?」
「あなたがそんなことする模型だとは思わなかった!!」
「いやッ、これはキンニクが……ってかコレ肺だったの?」
「ジェイソンのバカッ!!!」
だっ
僕の必死の弁明にもかかわらず、内臓サンは走り出した。
「えっ……ちょっ、内臓サン!? いや誤解ですって犯人はキンニクであって僕じゃないですから!! ちょっ、内蔵サ〜〜ンっ!?」
……それから数日間、僕は内臓サンに一言も口を利いてくれたとかくれなかったとか……
END