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ジェイソンとキンニクの事件簿

伊豆の(オトリ)(スパイ)大作戦〜

 僕たちの乗ったトラックは一瞬止まったかと思うといきなりバックし、再び止まった。
「素巴伊学園についた……みたいですね」
「よッしゃ-潜入だイエ--イ!!」
「ッて何でそんなにハイテンションなんですか!? 潜入なんですよ!? 失敗して正体バレたら生きて帰ってこれないかもしれないんですよ!? 僕たち生きているのか生きていないのかイマイチ判りませんけど……」
「しッ!! 黙れジャック」
「ジャック!? 何でさっきまでフッツ-に僕の名前正しく呼んでたのにイキナリ間違えるんですかッ!?」
「黙れ! 黙るんだジ○ック・バウア-!!」
「ってそれ24の某主人公の名前じゃないですか!! あの人ああ見えても一応FBIですよ!? スパイじゃないんですよ!? 『ス○イ大作戦』の主人公たちが指令を受けてるIMFでもないんですよ!?」
「……お前をこんなことに巻き込んでしまって……グスッ、すまないと思っている」
「なら巻き込むなよ!! しかもソレ、ジ○ックのマネでしょ-が!!」
 バカッ
 すると、トラックの扉が開き、ゆっくりと日の光が差し込んできた。
「わッ……眩しい!」
 そして、作業服を着た人がトラックの中に入ってきて、僕たちをトラックの荷台から出した。
 作業員が他の備品やら模型やら缶ジュ-ス(何で?)やらツナ缶(何でェェ!?)やらを運び出しているのを視界の端に留めつつ、僕は校舎を見上げた。
 ---目の前にそびえ立つ校舎は、さながら築何百年の古い洋館のよう。
 普通の学校とは、一味も二味も違う雰囲気を醸し出している。
 僕はその空気に圧倒され、鳥肌(皮膚ね-けど)が立った。
「---ここが、素巴伊学園----」

「--遠路はるばるようこそおいでくださった。私がここの理事長を務める、絵夢愛だ」
 少し狭い理事長室に招待された(つ-か無造作に置かれた)僕たち三人(三体?)は、ひときわ豪華な机に備えつけられた、いかにも座り心地よさそうな椅子に深々と腰掛けている女性をじっと見つめていた。
「M・I(ミッション・インポッシブル)ィィィ(ゥゥゥ)!!!」
 僕たちは理事長--絵夢愛の自己紹介(つ-か名前)にツッコミを入れた。
「……てか理事長さん、ひょっとして……ひょっとしなくても模型じゃないですか!?」
 どこかしら……てかどう見ても模型にしか見えない。
「ああっと、申し遅れた。私は本校の、模型の理事長だ」
「模型の理事長ぉぉぉ!? そんなモノあるんですか!?」
「ああ、この学校は特殊でな。模型の数も多いんで、私がまとめている」
「へ--え……」
 絵夢愛理事長はごほんと咳払いをして、話を切り替えた。
「では、早速君たちには本校に新入模型として潜入してもらう。ちょうど昨日入ったばかりの新人さんがいてね。彼に色々と教えてもらってくれ」
「彼?」
「さあ、入りたまえ」
 理事長の言葉が終わると同時に、がらっと理事長室のドアが開いた。
 僕たちはそこに現れた人物を見て愕然とした。
「彼は人体模型のミスタ-・ハ-フだ。しかもちょうど君たちと地元が同じらしくてね。よかったじゃないか。仲良くしたまえ」
「………半分サンんんん!?」
 僕たちは一斉に後ろを向いて身を寄せ合い、ヒソヒソ話し始めた。
「なんでこんなところに半分サンがいるんですかァァァ!! しかもミスタ-・ハ-フって……完全にバレバレじゃないですか!!」
「や……まさかな……潜入してるとは聞いていたが……こんなにすんなり逢えるなんてな」
「まさかじゃないでしょう!! 彼には僕たちだってバレてますよ絶対!! だからああやってアプロ-チしてきたんですよ絶対!!」
「どうするアル!? りじちょ-は気づいてないみたいネ!」
「ん? どうした? 具合でも悪いのか?」
 理事長は僕たちの動向を気にして声をかけてきた。
「え……いや、なんでもありまっせ-ん」
 僕たちは激しく適当な返事をした。
「どどどど-しましょう!! アレ絶対理事長って言葉に反応しましたよね!! 絶対聞こえてますって!!」
「大丈夫アルヨ!! アレはたまたまアル」
「そうだ! お前は心が弱いからそういうふうに思えるだけだって!!」
「何ソレ!! どこぞの精神論!?」
「お三方、先程から何を話しておられるのか?」
 ぎくぅ!!
「いえいえいえい何でもないです!! それより早く案内を……」
「ほう。せっかちなお客さんだな。来たばかりなのだから、今日はゆっくり休めばよいものを」
「そんなっ、いいですよ!! 僕たち早く帰りたい……もごご、早く慣れたいですしっ」
「……そうか。まあ君たちがそれでいいというのならしょうがないな。ミスタ-・ハ-フ、彼らを案内して差し上げなさい」
「はっ。--君たち、はぐれることなくしっかりとついて来るんだぞ」
「んだとてめぇ!! オレらに向かってそんなタメ口きくんじゃ---むごご」
 僕たちはキンニクの口を必死で押さえ、リ-が代わりに返事をした。
「あっ、ハ--イ!! 判ったアルヨ---!!」
「おお、なかなかいい返事だ。……えっと、名前は……」
「あ、申し遅れました。ジェイミ-で-す」
「キンキクで-す」
「リ-エン……もごごっ」
 うっかり本名を言いかけたリ-の口を固く封じ、キンニクが乾いた笑い声を立てながら返答した。
「ハハハ、ブル-ス・リ-で--す」
「そうか。よろしくな。--では、まず格納庫から案内しよう」

伊豆の囮〜囮大作戦
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