Home > Novel

第二回13金(2009.2/13)記念&サイトOPEN記念(遅いけど)書き下ろし小説

ガッコのカイダン

リカシツの七フシギ

「ジェーイミーィ!!」
 夜の学校にはおよそ似つかわしくないような叫び声が2階廊下に響き渡った。
「何ですかこんな夜分にッ!! 近所迷惑でしょーがッ!! つーか僕ジェイミーじゃねーし!!」
 僕はその声にムカついて、こちらに駆けてくる声の持ち主を叱咤した。
「たっ……助けてくれェェェェ!!!」
「……?」
 僕は彼--キンニクの尋常じゃない慌てぶりに訝しがった。
「……何ですか。話だけなら訊いてあげなくもないですけど」
「そっ、それがな……」
 キンニクはすかさず話し始めた。
「お前、学校の七不思議って知ってるだ……」
「断ります」

 僕はキンニクの言葉が言い終わる前にきっぱりと断った。
「何でだよー!!」

「どーせ『ガッコーの七フシギを一緒に解明してくれー!!』とか言うんでしょ? そんな話、ロクなことがないですよ。それに、たいていその中の一つは『僕ら(=模型)が動くー』とかいうやつじゃないですか?」
「違う! 理科室の十三不思議だ!!」
「…………ッて、十三不思議ィィィ!?」

「で、何ですかその『理科室の十三不思議』って。七じゃなくて? 倍くらいはあるじゃないですか!! 多すぎですよ!! しかもこんな寒い時期になんでまた怪談!?」
「こういう時期だからこそ背筋がゾゾーっとする方がいいんだよ」
「バレンタインデーの前日に言われたかないわ!!」
「まぁ要するに、その名のとおり理科室でおこる十三不思議なんだ。この学校に古くから伝わる--」
「ウソつけ!!」
「なんでそこでウソって決め付けちゃうんだよー。まったく、これだから近頃の若いモンは……」
「お前と同い年だしィィィ!!」
「ま、ウソかどうかは俺についてきてみれば判るって」

 キンニクについて行った先は、僕がさっきまでいた2階廊下の物置きの向かい側にある理科Ⅱ教室だ。
「…準備はいいか、ジェイソン」
 僕はキンニクの問いにうなずいて、ごくりとつばを飲みこんだ。
 ガララッ
 キンニクは勢いよくドアを開け、部屋の中を照らした。
 そのままゆっくりと歩を進める。
「……一つめは、人もいないのに、電気が--」
「…えっ!?」
「つくんだ。理科室から学校の外、見えるだろ。ほら、あそこの道路の」
 キンニクは窓ぎわにたどりつき、窓の外を指した。
「……ってアレ、暗くなったらそれを感知して自動でつく街灯じゃないですか!!」
「そ、そーなのか!!」
「知らなかったのかよ!!」
「い…いや、知ってたさ。あはは」
 キンニクはわざとらしく乾いた笑いをした。
「というか理科室どころか学校内でもないし」
「……で、二つ目は……」
 キンニクは僕の言葉を遮って続けた。
「この2つの液を混ぜ合わせると白くにごる!!」
 と言って物質名のラベルがはられた2本のビンを取り出し、それぞれビーカーに注いで、片方の液をもう片方のビーカーに注ぎ込んだ。
 すると、注ぎ込んだところから白色の沈殿が生じ、みるみるうちに液体が白濁した。
「……いや、それ硫酸と水酸化バリウム水溶液」
「…え?」
「沈澱の化学反応だっつの。中学レベルの」
「で、3つ目は」
「ってやっぱ僕の発言はスルー? つーかまたグダグダのじゃないだろーなキンニク!!」
「…ジェームズ」
「ジェームズじゃない! ジョンソン…あれ? ジェームズ? ジョンソン?あれ--?」
「ハハハ、ついにボケはじめたか、ジェイソン」
「ッてお前僕の本名知ってんじゃねーかァァァ!!」
「いや間違えた、ジョンソンだ」
「いや訂正しなくっていい!!」
「3つ目は俺らがしゃべ…」
「オイ! それはいい!! 次のだ次!!」
「4つ目は毎日ペンやら下じきやらが理科室に残っている」
「ただの忘れ物じゃねーか!!」
「5つ目はなぜか準備室にリカちゃん人形が落ちている」
「誰のだ!! ってかなんで準備室にリカちゃん人形持ちこんでるんですか…!!」
「だって理科準備室なんだもーん」
「『リカ』つながりかよ!!」
「……このカレンダー…じゃなくてリカちゃん、だれんだー。かれんだー」
「もーいい!! 帰るッ!!」
「んなこと言うなよー。お前キンニクねーのにー。動けねーだろー。てか棒がないとまともに立ってられねーだろー。な?」
「だったらお前のキンニクをくれ!!この人体骨格模型キンニクバージョンめ」
「やれるかァァァ!! ジャイアン、いい加減にしろ」
「いい加減にしろって言いたいのはこっちだーッ!! てか僕はド○えもんか!!」
「…は、いいとしてー」
「よくない」
「いいんだよ。ところでジャイ子君」
「…もういい」
 僕は呆れ果てた。
「何とでも言え…」
「じゃあ5つ目…あれ? 6つめ? だったっけ」
「6つ目だ、6つ目」
「ああそう。6つ目は…えっと……あぁアレだ、ええっと……」
「何だ、言えないのか」
「あ…あは--……」
「…まさかお前、今までのヤツ全部即興的に考えてたんじゃないだろーな」
 ギク。
「そッ、そんなことないさジェームズ君。ちゃんときっちり13個存在して……」
「きゃあああああ----っ!!」
「お?」
「…今のって、内臓サンの声?」
「またか…いーかげん作者も違う展開考えろよ」
「いや、何でもこの作品以前初期段階で削除(ボツ)になったのを再利用(リサイクル)してるみたいですよ。ちょうどFILEⅠの」
「あぁ、何か『時間がぁぁぁ時間がないぃぃぃぃ』とかわめいてたなアイツ……13金2ケ月連続で大変らしいな」
「最初は2ケ月で1作とか思ってたらしいですけど急遽やることになったから寄せ集めてるんですって」
「あぁ、だからこんな無理な設定……」
 刹那、僕たちは背後から殺気を感じた。
「うぉっと、ヤッベ! い、いこうかジェイソン」
「はッ、はい! お前が運べよ」
「へーい」

「んーだぁ、内臓サン。また肝臓でも盗まれたか?」
「そうなのよ…また肝臓が」
「クッソ、つーことは犯人は半分サンで決まりだな」
「待ってくださいよ!まだ半分サンって決まったわけじゃないでしょう! 証拠がないんですから」
「もうアイツに決まったも同然だろーがよ。たく、1パターンしかない薄っぺらいストーリー連発しやがって…」
「だ--ッ!! もうそれ以上言っちゃダメですってば!! またあの刺すような視線が襲来しますよ!! 第3の目からビームが出ますよ!!」
「もはや何の化け物?」
 まぁ何はともあれ、僕たちは元の話に戻ることにした。
「えーとまぁ、半分サン以外も犯人である可能性もあるとして考えましょう」
「でもよー、奴以外に誰もオレに怨みねたみつらみを持ってるヤツなんて想像できねーしさ」
「……ここに一人いますけどね……」
「を? 何か言ったか?」
「いえ何でも。---ていうか目的(ターゲット)はアンタじゃないんですよ。内臓サンなんです」
「……アレ? 何だコレ」
「何ですかキンニク。上腕三等筋でも外されましたか」
「おめーもそんなコトいうのかよ。ちげーよ。なんかオレの腹のあたりがゴロゴロと……」
 キンニクは人目もはばからず、ぱかっと筋肉を取り出した。
「ちょ、アンタ人前でそんなグロテスクな!!」
「おおお!!こ、これはッ……」
「?」
 キンニクが何故か喜色を示したので、僕は何があったのかよくわからなかった。
 キンニクは腹部からいびつな物体を取り出した。
「なッ……何ですかコレ!?」
「おおお!! こ、これは……オレに向けてのバレンタインチョコだな!! そっか〜、1日まちがえちゃったんだな〜もうっ?」
「ッてバカですか!? そんなわけないじゃないですか!! ッていうかどうやったらこのシチュエーションをそんなふうに取れるんですか!!」
「告白するならまっ先にオレのもとへ来ればいいのに」
「いやッ、誰もアンタなんかに告白しませんよ!!」
「お前もな」
「ッてやんのかコルア!!」
「ちょっと二人ともやめてよ!! それ私の肝臓じゃない!!」
「…へ?」
「『へ?』じゃねーよ!!見れば判るでしょーが!!」
「だッ、誰がコレを…」
 僕たちはじっとキンニクの方を見た。
「ちッちげーよ!! 天地神明に誓ってちげーよ!! オレ様がこんなッ…非模型道(じんどう)的なコトするわけねーだろ!! 半分サンじゃあるめーし!!」
「…とうとうそこまで落ちぶれましたか……あんたはどんなに間違って池に飛び込み、そこにたまたまいたカメに頭ぶつけて記憶失ったとしてもそんなコトしないと思ってましたが、そこまで追いつめられていたとは…それに気づかないなんて、僕もヤキが回りましたね」
「だからちげーって!! 濡れ衣だよ!! 誰かの陰謀だってば!!!」
「だって何か小難しい言葉使ってますもん。『天地神明』とか」
「やッ、それでもオレはやってない!!」
「そうだ! キンニク君をいぢめるな!!(怒)」
「……は?」
 明らかに違う声質の人物が、僕たちの会話に乱入してきた。
「ホラ、今年は年に数回しかない『13金』じゃないか!! もっとこう、ぱぁっと楽しまないと(笑笑笑)」
「……」
 僕たちは一瞬、動きが止まった。
「えっ…う、噂をすれば何とかやら…ですか?」
「っていうか犯人が直々に出てくるかしら」
「いや、FILEⅠであったじゃん。アレだろ」
「あぁ、使い回してるから……」
 僕たちはヒソヒソ話し始めた。
「ちょっとォ諸君んんん!! 何をヒソヒソ話してるんだ!! 吾輩も混ぜて混ぜて〜♪(挙手)」
「ああもう…誤魔化そうとしてキャラが変わってしまってますよ……半分サン」
「かわいそうに……」
「何!? 何がかわいそう? パトラッシュ!?(喜々)」
「何でそこでフランダース!?」
「…というか君……何だねその美味しそうなチョコルェイトは!!」
 半分サンは何だかキンニクと同じようなボケをかましてくれた。
「って、もうツッコむ気にもなれませんけど……アンタじゃないんですね? その口ぶりから言うと」
「は? 何が?(訳わかんねーコイツ)」
「何言ってんだコルァ!! てめっ、()内だからって何言っても許されるなんて思うなよ!! つかむしろアンタのほうが訳わかんねーから!!」
「え、じゃあ、これは誰の仕業……?」
 内臓サンがぼそりと核心を射た言葉を呟いた。
 しばらくの間、沈黙が流れる。
 その沈黙を破ったのはキンニクだった。
「--理科室の十三不思議だ」
 僕たちは一斉にキンニクの方を向いた。
「やッ、でもお前理科室にいなかったじゃん!! てかむしろ向かい側の格納庫じゃん!」
「でも理科室関するものが置いてあるじゃねーか」
「そ、そうですけど……」
 再び沈黙が流れた。
「理科室の、十三不思議だ……!!」

「へぶしッ!!」
 格納庫で甲高いくしゃみの声が聞こえた。
「うぅ……風邪アルカ?」
 天球儀模型のリーことリーエンスは、ずびっと鼻水をすすった。
「それにしてもキンニクさん、どうしてるアルカねぇ〜?」

『あり? これ何アルカ?』
 それは今朝のこと。
 やることもなくプラプラ歩いていたリーは、何か模型の一片っぽいものを見つけた。
『あっ、さてはキンニクさんの筋肉アルネ!」
 そう思い込んだリーは、がーがー寝ているキンニクの表面の筋肉をぱかっと外し、中に押し込んだ。

「たぶん喜んでいるアルよね。にしても落し物なんて、まったくそそっかしいアル」
『イ------ヤ---------!!』
 突然、理科室の方から悲鳴がきこえた。
「?」
『じゅッ、十三不思議がほんとにあったなんてッ!!』
『でもそうだろーがよ』
『イヤァァァァ私明日から学校(ここ)で生きてかれない!!』
「何アルカ? 騒がしいアルネ。ホラー映画でも観てるアルカ?」
『イ------ヤ---------!!』
 再び悲鳴が聞こえた。

 ……ま、真相は、黙っておこう。

★あとがき★

 やぁ人間の皆さんこんにちは(誰!?)。また(また!?)この季節がやって参りました。

 十三日の金曜日(略して十三金)イエ--!!

 季節っていうかこれはただのカレンダーの問題ですが。
 っていうかカレンダーのせいで来月も十三金……(悲鳴)次回はムリだろうなー。今回も結構大変だったし、間に試験挟むので……
 えーと今回は作中にもあるように、FILEⅠの没ネタを使いまわし再利用してます。あんにゃろー裏事情バラしやがって……今度遭ったらタダじゃおかねーからな!!(笑)
 しかも今回は006様に入力までもを押し付けて依頼しているというテイタラク。
 うわぁぁぁすみません!!!(涙)
 まぁとりあえずこの作品に協力してくださった方々、そして応援してくださっている読者の皆様に感謝です。
 こんな堕落しきった作者ですが、これからも作品ともどもよろしくお願いします。
 では。

    2009年2月13日に捧ぐ

Home > Novel