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ジェイソンとキンニクの事件簿

伊豆の(オトリ)(スパイ)大作戦〜

「す……すまない……」
 がっくりと肩を落として謝る絵夢愛に、僕は首を振った。
「い、いえ……勝負は時の運って言いますし、しょうがないですよ」
「……だが………」
 ピロリロリン♪
「……ん?」
 突然、どこからともなく携帯の着信音が聞こえてきた。
「メ-ルの着信音……私か。誰だ?」
 ピッ
 絵夢愛はごそごそとポケットを探り(アレ、まずこの模型(ヒト)服着てたっけ)、携帯を取り出し、開いた。
「……なっ………!!」
「何ですか!?」
 僕は小さな画面を身を乗り出して覗き込んだ。

『お久しぶりです。お元気ですか?
 と言っても先程、ヤフ○クでお会いしましたね。あの時は失礼いたしました。
 ああ、誤解しないで下さい。私は自慢するためにこのメ-ルを送ったわけでは決してありません。
 私の入札した模型二体--あれを、貴女に無償で差し上げようと思いまして。
 ウソだと思ってらっしゃるでしょうね。仕方がないです、あんなに高価なものを無償でなんて。
 数分待ってご覧なさい。きっと、貴女の欲しいものが届くと思いますよ。

トム・クル-ズ』

「絵夢愛さま! そ、外に、何やら変な箱が……!!」
「何ですって!?」
「おい、すぐに持ってこさせろ!!」
「はっ!」
 ぱたぱたぱた……
「ま、まさか……」
 しばらくすると、黒子たちが大きな段ボ-ル箱を担いでやってきた。
「絵夢愛さま!! お持ちしました!」
「よし、開けろ! くれぐれも慎重に!」
「はっ!!」
 黒子たちはべりっとガムテ-プを剥がして、箱を思いっきり開いた。
 ぱかっ
「ジェッ……ジェイミ-!!」
「あ-、箱の中って案外狭いアル。肩凝って仕方ないネ」
「キンニク! リ-さん!!」
 僕は箱の中に押し込められていた二人を見て、思わず叫んでしまった。
「ジェイミ-! コレ外してくれ!!」
「だ-から僕はジェイミ-じゃないっ……って、何ですかコレ!?」
 二人の身体に取り付けられていたのは、シックな目覚まし時計……じゃなくて--
「はっはっは!! ここに時限爆弾を設置した。今から三分以内にこの赤か青どちらかの導線を切らないと爆発するぞ! ドッカ-ンだぞ!! フハハハハハ(嘲笑)」
 突如、頭上から聞きなれた声がした。
「な、何だと!?」
「……名探偵コ○ンのパクリなカンジがするのは僕だけでしょうか……」
 キンニクが驚いて言葉を失っているのを尻目に、僕は冷静にツッコんだ。
「では、健闘を祈る! さらばだ! ハ-ハハッハ!!(逃っ)」
「って、ちょっと待て---っ!!」
「あ-ばよっ!!(逃走)」
 半分サンはキンニクの制止を気にも留めず、目にも留まらぬ速さで猛ダッシュし、瞬く間に見えなくなってしまった。
「……これからどうするアルか?」
「どうする、って言われても……」
「赤か……青か……」
 キンニクは柄にも合わぬ超真剣な顔でぶつぶつ呟きながら爆弾とにらめっこしていた。
「って何でアンタ導線切る気満々なんですかっ!!」
「よしっ、青だァァァ!!」
 キンニクは意思を固め、その辺にあったペンチを掴み、導線に手を伸ばした。
「ってアンタが今切ろうとしてんの、ソレ青じゃなくて赤じゃないですかァァァ!!」
 ぷっちん。
 どっか-------ん!!
「げほっ……ごほっ………」
 僕は爆発の際に発生した煙のせいでせきこみながら、キンニクを非難した。
「何で赤を切ったんですか!!」
「や…だって……赤ってキンニクの色じゃん?」
「…………」
 僕は呆れてものも言えなくなった。

「さ-てと。帰るか」
 先程の爆発に運悪く巻き込まれて気絶していた半分サンを縛り上げ、僕たちが乗ってきたトラックに放り込んだキンニクが言った。
「理事長さん。お世話になりました」
「ああ。ご苦労だった。達者でな」
 絵夢愛は僕の頭にぽんと手(アレ、手あったっけ)を置いた。
「また何かあったら遠慮なく連絡してくれ。力になろう」
「……ありがとう、ございます」
「ジェイソンさん! もうトルァックが出発しちゃうネ!!」
「は-い……ってリ-さんもキンニク発音に洗脳されちゃってる!!」
 僕は軽くツッコんで、絵夢愛に向かって一礼した。
「じゃあ」
「またな」
 僕はトルァック……じゃなくて、トラックの荷台に上がった。
「この学校ともお別れですか……」
 長かったようで短かった、素巴伊学園での生活。
 ブルルルルルル……
 僕たちを乗せたトラックは、夕暮れの伊豆の細道をゆっくりと走っていった……

「アレ?」
「どうした、ジン」
「僕はコ○ンに出てくる黒ずくめの男かァァァ!! --トム・クル-ズって、一体誰だったんでしょう?」
 自分の獲物を、たやすくライバルに無償提供するなんて。
「さ-な。ま、結果オ-ライじゃん?」
「……そうですね」

「へっくしゅん!」
 僕とキンニクとリ-がいなくなって、また以前の静けさに戻った物置きに、一つのくしゃみが響き渡った。
「はあ……ジェイソンたち、大丈夫かしら……」
 内臓サンは目の前にあるパソコンから目をそらし、近くの窓から三日月が覗く夕空を見上げた。
 ピロリロリン♪
「あ、絵夢愛からだわ。--何々、キンニクたちが無事届いたって? ああ、よかった………」
 内臓サンは目にも留まらぬ速さで返信を打った。

『そう。それはよかった。お役に立てて光栄です。では、またヤフ○クでお会いしましょう。

トム・クル-ズ』

 内臓サンはぱたんとパソコンを閉じて、夕日に照らされた廊下をスキップしながら歩いていった。

END

伊豆の囮〜囮大作戦
       Ⅳ

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